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【ブロッコリー育苗】最適な育苗期間と温度管理、徒長を防ぐ方法

【ブロッコリー育苗】最適な育苗期間と温度管理、徒長を防ぐ方法
出典 : 川村恵司/ PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーの育苗では、セルトレイや培土を用いた播種管理、適切な温度や遮光による徒長防止が重要です。液肥や農薬を適切に組み合わせれば、定植後の収量や品質が向上します。本記事では、実践的なブロッコリー育苗の手順と管理ポイントを解説します。

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ブロッコリーの栽培暦と育苗期間

ブロッコリーの収穫・出荷

KY / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーの作型には「夏まき秋冬どり」と「春まき初夏どり」の2種類があります。

「夏まき秋冬どり」の栽培暦

極早生~中生晩生
極早生~中生7月中旬 ~ 8月上旬8月下旬 ~ 9月上旬
晩生8月中旬 ~ 下旬10月上旬 ~ 中旬
収穫10月 ~ 12月翌年2月 ~ 3月

ブロッコリーの夏まき秋冬どりは、生育初期に徹底した防除を行うことで病害虫の被害を抑えやすい作型です。セルトレイ育苗の場合、育苗期間(日数)は25〜30日前後です。

特に夏の育苗期間は高温による徒長や根傷みが起こりやすいため、遮光や通風を工夫し、日中の温度上昇を抑えます。また、セルトレイ育苗では根張りを良くするために灌水や液肥の管理を丁寧に行い、健全な苗を仕上げます。

定植後は初期の防除を徹底しつつ、収穫は気温が低い時間帯に行うと、品質を保持しやすくなります。

「春まき初夏どり」の栽培暦

播種2月
定植3月下旬 ~ 4月中旬
収穫5月中旬 ~ 6月上旬

ブロッコリーの春まき初夏どりは、播種から生育初期が2〜3月の低温期にあたるため、発芽や初期生育の管理が難しくなります。栽培環境により異なりますが、育苗期間(日数)は40〜50日間前後です。

播種の際には地温15℃以上を確保して発芽を安定させる工夫が必要で、保温資材や加温設備を活用すると生育をスムーズに進められます。

低温期は生長が緩慢になりやすいため、この時期に水分や養分不足による生育停滞を防ぐ管理が重要です。その後、気温の上昇に伴って花蕾の肥大が早まるため、収穫適期が短く採り遅れると品質が低下します。

春播き栽培は気象条件の影響を受けやすく難度は高いですが、初夏の端境期に収穫できるため、市場性の高い作型として活用されています。

ブロッコリー栽培での「育苗」の重要性

ブロッコリー栽培において適切な「育苗」を行わなかった場合、その後の収量が低下しやすくなります。ではなぜ「育苗」によって収量に差が出るのでしょうか。その理由と徒長によるデメリットや育苗の重要性について説明します。

苗が徒長すると根張りや生育の悪さの原因に

ブロッコリーの機械 定植

Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

ブロッコリーをセルトレイで育苗した場合、定植するタイミングでその後の生育に大きく影響します。台風や長雨などで定植が遅れてしまうと、苗が徒長するため機械定植適性の低下が起きたり、根鉢のまわり過ぎで活着の遅れが発生したりします。

活着の遅れによる根張りの悪さは、生育不良や不整形花蕾(形が乱れてしまった花蕾のこと)の原因となり、収量低下にもつながるでしょう。また、定植適期を逃すと、茎葉の生長が十分ではないうちに低温遭遇して花芽分化してしまうため、花蕾が小さくなる「ボトニング」が発生するリスクもあります。

そのほか、徒長した苗は普通の苗よりも枯れやすく虚弱であることから、病害に侵されやすくなります。このように定植時期のずれにはさまざまなデメリットがあるため、適切なタイミングで定植を行うことが大切です。

定植まで苗の大きさを一定に保つ栽培管理が重要!

ブロッコリーは定植適期が短いため、「播種作業を分散させない」、「適期に定植する」ように管理し、苗の徒長を防がねばなりません。しかし、地域によっては水稲の収穫作業とブロッコリーの播種作業の時期が重なったり、時期的に台風や秋雨の影響を受けたりして、どうしても適期に定植ができない場合もあります。

その場合、定植まで苗を徒長させないよう一定の大きさに保つ育苗管理が重要です。

ブロッコリーの育苗方法(セルトレイ育苗)

ブロッコリー セルトレイ育苗

茶華月/ PIXTA(ピクスタ)

次に播種から定植までの育苗管理の方法について解説します。

【播種】播種方法と播種量の目安

まずは地域の気候条件などを考慮して品種を選択します。播種量は10a当たり40~60ml程度で、128穴セルトレイ1穴につき1粒ずつ播種を行います。予備苗も含めて10aでセルトレイ35~45枚が目安となります。

共同育苗などを行う場合は、セルトレイ用の土入れ機と播種機を併せて使用することで、セルトレイへの土入れと、播種・覆土の省力化を図れます。また、手作業の場合でも、コート種子を使用することによって播種機の使用が可能となるため、同じく省力化できるでしょう。

【育苗管理】発芽適温と、基本の育苗管理

ブロッコリーの発芽適温は25℃前後で、30℃以上の高温が続くと発芽に影響を及ぼすため、寒冷紗などの被覆資材を用いて遮光を行い、地温を下げましょう。暖地などもっと暑くなる地域では、熱線カットフィルムの使用もおすすめです。

好適環境下であれば、2~3日後には発芽します。播種したセルトレイは、パイプや木などを下に敷き、地面との間に30cm以上の空間を作って通気性を高めます。育苗ハウス自体も風通りをよくして、熱がこもらないようにしましょう。

発芽後も直射日光を避けるために、寒冷紗などの被覆資材や熱線カットフィルムを晴天時の10~15時頃を目安として利用しましょう。熱線カットフィルムを使用したハウスからそのまま定植すると活着が遅れるため、2~3日前には外に出して暑さや紫外線に慣れさせておくことが大切です。

育苗期間中の水分管理は、重要なポイントです。播種後の灌水は十分に行い、発芽するまで用土を乾燥させないように注意します。特にコート種子はコート内の種子まで水分を行きわたらせる必要があるため、裸種子よりも十分な灌水をするように心がけてください。

発芽後の灌水は、早朝から午前中までに1~2回行います。高温期の育苗では乾燥に注意しなければなりませんが、過度の灌水は夜間加湿となり苗が軟弱となって徒長しやすいため、夕方には表面がやや乾燥気味になるようにしましょう。

灌水の回数は最小限に抑えて、1度に多くの水を与えることが育苗のポイントです。乾燥のし過ぎも過度の灌水も、徒長の原因となるので注意してください。

苗の徒長を防いで収量を保つ2種類の施肥方法

ブロッコリーのセル苗

Taner / Adobestock.com

最後に、育苗管理の中でも重要な施肥方法について解説します。従来の方法と比べても収量が低下せず、苗が長期間維持できる方法を紹介していますので、ぜひチェックしてください。

1. 液肥を使わず、「肥効調節型肥料」のみを使う栽培方法

通常、ブロッコリーなどの葉菜用育苗培養土は、窒素肥料分が少ないため播種して2週間たった頃から液肥などで追肥を行わなければなりませんが、定植時期が遅れた場合には、苗が徒長してしまいます。

北海道立総合研究機構では、育苗期の効率化と苗質の安定を目的として「肥効調節型肥料」を利用した事例を紹介しています。育苗中に追肥を行わず、定植前に肥効調節型肥料をセルトレイ当たり一定量施用することで、苗に必要な養分を安定的に供給します。

従来の液肥を中心とした管理と比較した試験では、育苗期間中の施肥労力を軽減できるうえ、定植後の生育や収量にも大きな差はみられませんでした。また、施用量を調整することで過剰施肥による徒長や根傷みを防ぎやすく、均一な苗づくりに役立つ点も報告されています。

さらに、春先など気温条件が不安定な時期でも、肥効調節型肥料を利用することで生育停滞を抑え、安定した苗の供給が可能です。

また埼玉県では、リン酸やカリが過剰に蓄積したほ場において、液肥を使わず「肥効調節型肥料」のみで施肥管理を行う栽培方法が試みられています。セル苗の基肥に窒素主体の肥効調節型肥料を全量施用する方法で、育苗中の追肥や液肥の施用は行いません。

試験では、窒素施用量を慣行の50%に削減しても、苗の生育や発根は良好で、収量や花蕾の大きさ、外観品質は従来の方法とほぼ同等という結果が得られました。さらに、リン酸・カリの過剰蓄積を抑制できるため、土壌養分のバランス改善や環境負荷軽減にもつながると報告されています。

出典:北海道立総合研究機構「農業研究本部 農業技術情報広場」所収「肥効調節型肥料を用いた野菜の効率的施肥法」
埼玉県「リン酸、カリ蓄積ほ場におけるブロッコリーセル苗の全量基肥施肥法」

2. 育苗の全期間を「施肥なし」で行う栽培方法

苗の徒長を回避しながらも長期間、苗の状態を維持するために開発されたのが、「長期常温貯蔵技術」を活用した育苗方法です。この方法の特徴は、育苗中の全期間を底面からの水補給のみで管理することにあります。一定の大きさを90日もの間にわたって維持し、常温貯蔵が可能です。

播種後の芽出しは従来の育苗と同様に行い、その後タイマー付き電磁弁で1日1回、約2cm程度湛水しセルトレイ底面より給水をします。この方法で育苗した場合の苗質は、播種後30~40日頃より葉色が薄く、茎の太いがっちりした苗になることが特徴です。草丈も伸びず下葉脱落によって総葉数も増えないため、一定の大きさを維持できます。

慣行苗と比較して収穫の最盛期が4日ほど遅れるものの、収量や品質に違いは見られません。また品種ごとの適期に定植できるのであれば、前述の方法と同様に早播きにも対応可能です。

出典:農研機構「ブロッコリーのセル成型苗における長期常温貯蔵技術」

ブロッコリーの収量は育苗管理と定植時期の見極めによって決まる

ブロッコリーの出荷

大久保翔太 / PIXTA(ピクスタ)

今回はブロッコリーの育苗管理や苗の徒長を防ぐ方法などについて紹介しました。ブロッコリーの収量には育苗管理と定植のタイミングが大きな影響を与えるため、正しい知識を身に付けて苗の大きさを一定に保てるように適切な育苗管理を徹底しましょう。

水稲収穫時期と重なったり、台風の影響を受けたりして定植時期のずれに悩まされている方は、ぜひこの記事で紹介した定植直前に「肥効調節型肥料」を施肥する方法や、施肥なしで底面からの水補給のみの管理を行う方法を試してみてください。

どちらも収量を保ったまま苗の長期保存が可能となるため、問題解決の糸口になる可能性があります。

百田胡桃

百田胡桃

県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。