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連載|農業を科学する 第2回「隣ではうまくいった」が再現しない理由

連載|農業を科学する 第2回「隣ではうまくいった」が再現しない理由

隣の圃場でうまくいったことが、自分の畑では再現しない——その差は土壌条件にあった

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こんにちは。Eric Kawabe & Associates社長のオテリーアップシャールです。
私たちはニュージーランドを拠点に、世界各地の農業者の土壌改善をサポートしているコンサルティンググループです。

前回の記事では、この80年で土がいかに変わってきたか、そしてなぜ「肥料を増やしても結果が出にくくなっているのか」という大きな流れをお伝えしました。
最後に「なぜ隣の農業者でうまくいったことが、自分の畑では通用しないのか」という問いを投げかけましたが、今回はその答えを一緒に考えていきます。
土は、農業者にとってかけがえのない財産です。その状態をきちんと把握し、劣化を防ぐことが、経営を守る上でもっとも確かな戦略になると私は考えています。

minorasu(ミノラス)の画像

オテリーアップシャール(Ottilie Upshall)

Eric Kawabe & Associates 社長。創設者エリック川辺博士の知見を継承し、アメリカの独立系土壌分析ラボと連携しながら、世界各地の農業者の土壌改善と生産性向上を支援。

「一つの正解」が存在しない世界

農業の現場には、残念ながら「これさえやれば大丈夫」という万能な答えはほとんどありません。
なぜなら、畑ごとに土の質も地形も気候も、これまでの肥料の歴史も違うからです。
ある圃場でうまくいったやり方が、隣の圃場でも通用するとは限らない。それは不思議なことでも、腕の差でもありません。
前提となる条件が、そもそも違うのです。

また、これまでの習慣にこだわりすぎるのも見直す必要があります。
土のバランスは少しずつ変化していくもので、かつてのやり方が今の土の状態に合っているとは限らないからです。
分析なしに、土の中のミネラルバランスを正しく整えることはほぼ不可能です。
同じ条件で同じ手順を踏めば同じ結果になる——この「再現性」という考え方を農業に当てはめると、条件(土壌の状態)が違う圃場では結果が変わるのは当然のことだといえます。

まず「見る」ことから始まる土壌診断

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圃場の観察。葉の色や茂り方が、土壌の状態を映し出す。

では、自分の圃場の条件を知るにはどうすればいいか。
最初の一歩は、実はとてもシンプルです。
自分の目で畑を観察すること——これが土壌診断の出発点になります。
費用もかかりませんし、その場ですぐに手がかりが得られます。

土の色、質感、硬さ、湿り気、匂い。これらは土壌の健康状態を知るための重要なヒントです。
植物を見ても多くのことがわかります。芽の出方、葉の色や大きさ、病害虫への強さ、乾燥への耐性。

こうした観察を日々の習慣にすることで、異変に気づく感度が確実に上がっていきます。

最近ではドローンや衛星画像によって、地面に立っているだけでは気づきにくい、畑全体のムラや傾向を把握することもできるようになりました。
こうした技術も、足元での丁寧な観察と組み合わせることで、はじめて力を発揮します。

観察を「確信」に変える土壌分析

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土壌サンプルの目視診断。掘り出した土を板の上で広げ、色・質感・構造を確認する。

観察から得た気づきを確信に変え、具体的な対策につなげるのが、科学的な土壌分析です。
分析結果があれば、作物の反応に合わせた無駄のない施肥計画を立てることができます。
継続的に分析を行うことで、植物に目に見えるトラブルが出る前に、土壌の変化を数値として捉え、先回りして手を打てるようになります。

収穫が思わしくない理由はさまざまですが、農業の現場では「とりあえず窒素肥料を増やそう」という対応がとられることがよくあります。
しかし実際には、窒素はパズルの一ピースに過ぎません。
不調の本当の原因を突き止め、施肥のやりすぎや不足——どちらも作物と土を傷めます——を防ぐには、正確な分析データが欠かせないのです。

ミネラルは「単独」では語れない

土の中でミネラルはたがいに影響し合っています。
あるミネラルが過剰になると、別のミネラルの吸収を妨げる。
逆に、あるミネラルが足りなければ、他の要素がうまく機能しない。
この複雑な相互作用が、植物の不調として現れます。

配合済みの肥料を分析なしで使い続けると、特定の成分が蓄積しすぎてしまうことがあります。
これはコストの無駄になるだけでなく、収量や土壌の健康にとっても好ましくありません。

さらに、土の微生物の活動や有機物の量、土の物理的な性質も、植物が栄養を吸い上げる力に深く関わっています。
耕起の方法、堆肥の投入、カバークロップの活用——こうした日々の管理が積み重なって、土壌という複雑な生態系が形作られているのです。

「自分の土のデータ」を持つということ

正確な分析データを「基準」として持ち続けること——それが、土を深く理解し、施肥計画を最適化していくための鍵です。
最新のテクノロジーと、長年培った観察眼。
この両方を組み合わせることで、コストを抑えながら、自信を持って判断を下せるようになっていきます。

次回は、「土壌科学の三脚モデル」を取り上げます。

土の中には何があり、どう見ればよいのか。
物理性・化学性・生物性を一体として捉える、科学的な土壌管理の基礎フレームワークを解説します。

須藤貴之(Eric Kawabe & Associates)による「土づくり勉強会&Humus活用圃場 視察会」を開催します

この連載でお伝えしていることを、現場で一緒に確かめてみませんか。
2026年7月、Eric Kawabe & Associates所属の農業・土壌コンサルタント・須藤貴之が直接お話しする勉強会と、土壌改善を支援するサービス「Humus」を導入している農業者の圃場を見学する視察会を、東北・関東各地で開催します。

当日のプログラム(13〜20時)
 1. 須藤貴之による土づくり勉強会
 2. Humus実践圃場の視察会(バス移動)
 3. Humus実践農業者を交えた懇親会(会費制・任意参加)

開催日程
 ● 2026年7/3(金)山形県・鶴岡
 ● 2026年7/6(月)秋田県・大館
 ● 2026年7/7(火)青森県・五所川原
 ● 2026年7/13(月)茨城県・境町
 ● 2026年7/15(水)新潟県・新潟

会場の詳細は申し込み後にご連絡します。農業者の方のみご参加いただけます。

minorasu編集部

minorasu編集部

minorasuは、「農業経営をより効果的に実践したい」「これまでなかなか踏み込めなかった農業経営にまつわるノウハウを学びたい」といった、農家の皆さまのお悩みに応えるためのメディアです。それぞれの課題を乗り越えるのに役立つよう、生産効率、資金計画、加工・流通など様々な角度から情報をお届けします。