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日本農業の課題と解決策 | 農家ができる未来に向けた対策とは?

日本農業の課題と解決策 | 農家ができる未来に向けた対策とは?
出典 : Yoshitaka / PIXTA(ピクスタ)

日本の農業が直面する課題には、担い手不足など以前から抱えているものに加え、TPP発効など外部環境によって対応が迫られているものもあります。その中でも特に重要な問題を3つ取り上げ、現状と対策について解説します。

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日本農業を取り巻く3つの課題

淡路島産 玉ねぎ 安売り

白熊/PIXTA(ピクスタ)

まずは、日本の農業が抱える多くの問題の中から、「高齢化・担い手不足」「耕作放棄地の増加」「TPPによる価格競争」の3つに着目し、それぞれの現状について解説します。

1. 高齢化等による担い手の減少

農業の担い手不足と高齢化の問題は、長い間指摘され続け、さまざまな政策を行ってきたにもかかわらず未だ改善が見られません。自営農業を仕事にしている「基幹的農業従事者」の減少は止まらず、その平均年齢も上昇し続けています。

農林水産省の「農業センサス」と「農業構造動態調査」をもとに、2015年以降の基幹的農業従事者(個人経営体)の数を見ると、2015年の175万7,000人から毎年減少を続け、2020年では136万3,000人になっています。2024年の農業構造動態調査では114万人と、さらに減少しています。

個人経営体の基幹的農業従事者数(万人)

出典:農林水産省「農林業センサス」「農業構造動態調査」よりminorasu編集部作成
※2005年・2010年・2015年・2020年は「農林業センサス」の全数調査による数値、それ以外の年次は「農業構造動態調査」の標本調査による推計値であるため、両者の年次ごとの数値比較はできないことに留意してください。

さらに、「農業センサス」では基幹的農業従事者の年齢についても、2015年の67.1歳からわずかな上下はあるものの、2020年には67.8歳と相変わらずの高齢化傾向が見られることがわかります。

基幹的農業従事者数と平均年齢の推移

出典:農林水産省「農林業センサス」よりminorasu編集部作成

担い手の減少と高齢化の主な原因は、年々離農する農家がある一方で、新規就農者が思うように増えないことが挙げられます。

新規就農者数は2020年の5万5,900人から2024年は4万3,500人まで減少傾向にあります。

新規就農者数推移

出典:農林水産省「新規就農者調査」よりminorasu編集部作成

毎年安定して数万の新規就農者がいるということには希望が持てますが、せっかく新規就農しても、農業経営が軌道に乗らなかったり地域に馴染めなかったりして、数年でやめてしまうケースも少なくありません。

新規就農者数を維持し、かつ長く続けられるように、地域全体で新規就農者をサポートしつつ馴染みやすいコミュニティづくりに努めることが重要です。

2. 耕作放棄地の増加

耕作放棄地や荒廃農地の増加も、長い間認知されながらも改善できない深刻な問題です。

なお、「耕作放棄地」とは農林業センサスのアンケートで用いられている言葉で、農家が主観的に「1年以上作付けされる予定がなく、数年内に作付けの予定がない」と回答した土地のことです。

一方で、「荒廃農地」は、農林水産省「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」において使われる言葉で、市町村や農業委員会の調査員が「荒廃しそのままでは作物の栽培が不可能」と客観的に判断した農地を指します。

定義は異なりますが、どちらもほぼ同じような土地を指すと考えてよいでしょう。

出典:農地の定義についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

出典:耕作放棄地や荒廃農地と農地法における遊休農地の違いと面積についてはこちらの記事をご覧ください。

近年の耕作放棄地の面積推移を見ると、2010年の農林業センサスでは39万6,000ha、2015年には42万3,000haというように微増を続けています。1990年の21万7,000haと比べると、20年でほぼ倍増していることがわかります。

耕作放棄地の面積推移

出典:農林水産省「農林業センサス累年統計」よりminorasu編集部作成

耕作放棄地が増加している原因として最も多いのは、高齢化や労働力不足により、すべてのほ場では作付けできなくなり、一部のほ場の耕作を放棄してしまうケースです。

また、農地のまま土地を所有している非農家、つまり農家をリタイアしたものの後継者が不在で、農地をほかに転用せずそのまま所有しているケースもよく見られます。

そのほか、農作物の価格低迷や収益の悪化を理由に作付けをやめてしまうケースもあります。いずれも長らく問題視されており、日本の農業に根深く存在する、解決の難しい課題となっています。

耕作放棄地や荒廃農地は、数年後に農地に戻る場合もありますが、そのまま作付けされずに荒廃するケースも少なくありません。そうなると、もう農地に戻すことは困難で、食糧生産という役割を果たせなくなります。

また、農地は農業のためだけでなく、地域の治水や環境システムの維持といった多面的な役割を持っています。

それゆえに、荒廃することで病害虫の発生源となって周囲の農地に悪影響を及ぼしたり、地域の自然環境や景観、治安の悪化につながったりすることも、地域全体の深刻な問題とされています。

3. TPPによる価格競争

TPPやRCEPに代表される自由貿易の波

tunasalmon/ Shutterstock.com

「TPP(Trans-Pacific Partnership)」とは、太平洋を取り巻く国々からなる「環太平洋パートナーシップ」の略称です。

「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」は、日本を含む11カ国による経済連携協定を指し、関税や各種規制の削減・撤廃を通じて、モノ・投資・情報・サービスの自由化を目指しています。

農林水産分野の2,594品目のうち約8割に当たる2,135品目の関税が撤廃され、自由化が進行中です。これにより外国産の農産物が安価に市場に出回るため、国内外との価格競争が激しさを増しています。

出典:農林水産省「CPTPPについて」

こうした中、日本の農家には効率化やコスト削減、ブランド化、独自販路の確立といった経営改善がより強く求められ、引き続き多様な対策や経営力強化の必要性が高まっています。また、農林水産物の輸出額拡大や、スマート農業の推進、大規模化などの施策も進行しています。

課題解決のキーワードは「持続可能な農業の実現」

これまで見てきた農業の問題は、日本に限らず世界中の農業に共通しており、各国でさまざまな対策がとられています。中でも、課題解決のカギになるとされているのが、「持続可能な農業の実現」です。

SDGs 17の目標

出典:国際連合広報センター

国際的に取り組まれているSDGs(エス・ディー・ジーズ:持続可能な開発目標)でも、目標の2つ目である「飢餓」を終わらせる方法として、持続可能な農業の促進を掲げています。

持続可能な農業とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。例えば、偏った施肥や過剰な連作で土壌の養分バランスを崩し、ほ場への負荷が高い農業は、持続的とはいえません。

土壌や水、日光をはじめとした天然資源を有効活用し、ほ場を取り囲む自然環境や生物多様性に配慮しながら、必要な施肥や農薬散布も適切に取り入れ管理することが、持続可能な農業には不可欠です。

これからの農業は、自然の恵みと人間の知恵や技術をバランスよく組み合わせながら、気象変動による未曾有の災害などにも適応する持続力が求められます。

また、作物の栽培についてだけでなく、農家が農業経営を続けられるよう、収益の安定・向上や作業コストの削減に取り組むことも、持続可能な農業の実現には必要です。

農家の努力だけによらず、規格外野菜を有効活用したり、農産物の適正価格を維持したりするなど、地域の人や自治体・国・消費者をも巻き込んだ取り組みが、日本農業の根深い問題の解決につながるでしょう。

日本で農家として生き残るには? 今実行したい解決策

ヨーロッパ 食料 安定供給

maru /PIXTA(ピクスタ)

解決できない課題は、思い切った発想の転換によって効果的な解決策につながることもあります。新たな目標を掲げ積極的に取り組み、経営規模を拡大していけば、農業全体が活性化し、新規参入が増え、耕作放棄地の解消につながるかもしれません。そこで以下では、すぐにでも取り入れてほしい農業の最新情報をご紹介します。

スマート農業の導入

IoTやAI、ロボット技術などの先端技術を取り入れた新たな農業技術「スマート農業」の導入は、農作業の効率化や省力化を大幅に進める効果が期待できます。老舗メーカーから新進気鋭のベンチャーまで、多くの企業から優れた商品やサービスが続々と開発されています。

ドローンによる農薬散布や生育管理、自動水管理システムによる給排水の制御、アシストスーツによる体への負担軽減、トラクターの自動操舵などをはじめ、少ない人数や負担でより多くの作物を栽培するための技術開発は、日進月歩で進んでいます。

これらは担い手の減少にも対応し、適切な栽培管理による高品質化や収量増も期待できるため、作業の一部分からでも導入を検討するとよいでしょう。

農地や経営の大規模化

担い手不足に対応し、作業効率化やコストダウンのための策として、日本では現在、農地の集約や経営体の大規模化が進んでいます。

すでに農地を所有している農家でも、農地バンクなどの利用でまとまった農地を確保して規模を拡大できます。そのうえで大型機械や管理システムを導入すれば、効率的な農作業で大幅な収量増を実現でき、農家の所得向上にもつながります。

規模拡大にあたっては、法人化することで融資を受けやすくなったり、税金対策ができたりするので、併せて検討するとよいでしょう。もし、近隣に耕作放棄地などがあるならば、それらを集約することで土地の有効活用にもなり一石二鳥です。

集落営農への取り組み

もともと小さな農地が点在しているような山間などの地域では、大規模化は難しいかもしれません。その場合は、集落単位で共同による農作業をしたり、農業経営を分担したりする「集落営農」を検討するのもよいでしょう。

個人では難しい施策も地域一丸となって実行できるため、担い手の確保や設備・農機の共有、作業の分担ができ、耕作放棄地の対策にもつながります。そのほか、地域全体の活性化や他産業との連携も可能です。

社会的信頼を得るために法人化すれば、地域を挙げたブランド化や6次産業への取り組みにもつなげられます。

農作物のブランド化

収益を増やして持続可能な農業経営を実現するためには、大規模化によって効率的に農作物の収量を増やすほか、小規模でも作物に高付加価値をつけてブランド化し、単価の向上をめざす方法があります。

特産品や、特に栽培に向く作物のある地域であれば、SNS・ホームページ・独自のパッケージ・ロゴなどを作って、その特性を最大限にアピールするのがよいでしょう。他所との差別化ができ、ブランド化につながります。

ブランド化で大きな成功を収めた例に、茨城県かすみがうら市・野口農園の1本5,000円のレンコンがあります。野口國雄さんは、品質の高い「あじよし」という品種のレンコンを、独自に開発した方法でハウス栽培していました。しかし、ほかのレンコンに対して特に差別化をしていなかったため、息子の憲一さんはそれを特製の箱に詰め、1本5,000円のレンコンとして売り出しました。

値段に見合った品質だったため、「あじよし」は評判を呼び、一農家でありながら大手総合食品商社と口座を開くまでの成功を収めます。

その後もマルシェや展示会に出品したり、SNSを活用したりして地道に広報活動を続けた結果、次第に口コミで評判が広がり、2017年にはニューヨークのレストランで採用されるまでになりました。

自信を持って自分の作物に価値があるといえるのであれば、強気で積極的な戦略が成功につながると、この事例からわかります。

柳蓮田|野口農園

出典:AGRI JOURNAL 成功する農業後継「農作物のブランド化を目指す」

6次産業化を検討する

自ら栽培した作物を使って加工・製造した商品を販売することを、農業(1次産業)・製造(2次産業)・販売(3次産業)を合わせて「6次産業化」と呼びます。

農産物だけではありふれていて差別化が図れない場合でも、6次産業化することでブランド化し、売り上げを伸ばす方法があります。

その事例として、埼玉県熊谷市の「TATA GREEN株式会社」の取り組みを紹介します。創設者はもと証券ディーラーでしたが、農業の魅力に取り憑かれ、2012年に30aの作付けを始めてサツマイモの専業農家になります。

そして、自社のサツマイモの風味がよいことをより感じてもらうために、オリジナル商品「焼き芋の干し芋」をはじめ、「冷凍焼き芋」や「さつまいもプリン」など関連商品の開発・販売まで手掛け、6次産業化を進めました。

商品の宣伝にはSNSを活用し、自社店舗を使って焼き芋の匂いと対面販売を利用して、顧客の心を掴みました。その後はSNSによる口コミなどで評判が広がり、多くのファン獲得に成功します。

また、売上高を向上させるために、ペースト状にしたサツマイモを冷蔵保存し、販売の長期間化を実現しました。廃棄ロスの削減にもなり、通年販売につながっています。


TATA GREEN株式会社

出典:農林水産省「6次産業化の取組事例集」所収 「6次産業化の取組事例集(令和3年3月)」

日本の農業は、担い手不足や耕作放棄地の増加など、深刻な問題を多く抱えています。そのうえ、今後は世界的な価格競争への対応が求められます。

それでも、毎年コンスタントに意欲のある新規参入者が現れ、自分の作物に自信を持って売り出し、成功を収める若い農家もたくさんいます。

農業は本来、自由でやりがいや喜びに満ちた職業です。ピンチをチャンスと捉え、地域を巻き込みながら問題解決に取り組みましょう。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。